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普段目にする「明かり」に秘められた販売戦略とは!?|第1回


洋服や生活用品を買いに足を運ぶショップ内で、デートや記念日に訪れるレストランの中で、あたりまえにある店内の「明かり」。実は、その明かりをテーマに販売戦略を考えるプロフェッショナルがいる。その中で、日本のみならず海外でも高い評価を受け、大型量販店やクリスマスイルミネーションなど、普段私たちが目にしている明かりを届けているのが4hearts co.,ltd.代表の大高啓二さんだ。彼の職業は、VMDディレクター。人間の五感を通して、気持ちを豊かにさせる販売戦略の話は、「明かり」を中心に奥深い世界へと広がりを見せる。

全4回で、大高啓二さんの見る明かりの世界に踏み込んでみる。


大高啓二氏プロフィール

1968年山梨県生まれ。小売業で販売経験を生かしたVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)担当として、様々な売り場づくりのディレクションを行い、現場での指導や研修を行う。VMDの視覚的訴求にプラスして、音・香・光・動など五感に訴える要素を取り入れ、モノを買うだけではない体験型の「心が動く空間創り」をトータルにプロデュースするVMD+空間演出プロデューサー。


ーーVMD、という単語自体が馴染みが薄いものなのですが、どういったものなのでしょうか?

大高:「Visual Merchandising」の略称で、店舗設計や空間作りを視覚的作用によって商品の販売促進、売り場演出の最適化を図ること、と言われています。僕たちの言葉では、「視覚的に人々の心に響くメッセージを発信する手法」です。

視覚は、五感の中でも80%以上を占める役割を持っていると言われており、特に感覚の中でも重要な要素なんです。私の場合は、ここに音や香りなど他の五感を使った体感をプラスした「VMD+」という提案をしています。よくイメージされるディスプレイ、陳列だけではなく、明かりの演出なども含めた空間演出において、販売促進に欠かせないものだと考えています。


ーーVMDの中で、明かりはどのような要素を持っているのですか?

大高:視覚、という分野を明かりなしで語ることはできませんよね。その中で優先順位をつけるのも難しいですが、明かりの持つ力は生活にとって欠かせないものであり、商業においてもまた欠かせません。

その店舗やブランドのイメージを、明かりは作ることができるんです。例えばカジュアルな客層の多い量販店と、高級レストランでは狙うターゲットは違います。それぞれのターゲットに合わせて、明かりの表現を変える必要がありますね。


ーー業種によっても、明かりの使い分けはありますか?

大高:業種、というよりも、これも生活に根ざしているものなのですが、明かりには色温度というものがあります。黄色系の電球色は食卓に合い、職場や会議室など、仕事場では白系のものがスッキリとして業務効率を上げる、などが有名ですね。

温かみのある温度は食品を美味しく見せる効果を持つので、食品系の店舗ではご飯を美味しく見せる色温度、美容系は肌を美しく見せるために白系の色温度を使う、などはありますが、それよりも重要なのが、先にも言ったブランドのイメージを作る、ブランディングとしての光の演出です。


ーーどのように、ブランディングにあった店舗の演出をするのでしょうか?

大高:店舗ブランディングの代表的なものは、大きく3つです。それは、カジュアル、リラックス、ラグジュアリー。

例えば、僕が手がけたものだとロフトやオッシュマンズなどの大型量販店。これはカジュアルの代表です。店舗には老若男女多くの人々が行き交い、それぞれが欲しい商品を探して店舗内を歩き回ります。こういった店舗では、視認性が良く、明るい、清涼感のある演出が大事なんですが、そこでの明かりの演出は全体を広い視点で明るく見せるために、1000ルクス以上の明るさのライトを等間隔に配置します。蛍光灯をつけた部屋の明るさが500ルクスくらいなので、これよりもかなり明るいイメージですね。これにより、商品と空間に均一に光が当たり、全体がよく見渡せて楽しく買い物ができるようになっています。

オシュマンズ店内                       DULTON(ダルトン)店内


大高:対して、スパやマッサージショップなど、リラックスを目的とした店舗設計。こちらでは床下から間接照明を柔らかく配置します。全体のライトは暗く落としていますが、ゆったりとした明るさで施術を受けるのに必要な、落ち着いた雰囲気の演出に一役買っています。


大高:そして、最後にラグジュアリーな印象を与えるための設計。直接照明と間接照明を組み合わせることで、自分の手元や、見るべき商品に特に明かりが当たる設計です。高級感ある非日常的な演出ですね。高級レストランやブティック、美術館などではこのような光の演出を多く使っています。


ラグジュアリーな明かりの使い方を特に「演出されている」と思う人は多いですが、カジュアルな店舗にもこのように狙いのある演出はされているんです。それぞれに優劣があるわけではなく、狙いが違うということですね。そういった目線で見ると、明かりの重要性はさらに見えてくると思います。


まずはVMDとはなんなのか、そしてVMDの世界で明かりはどのような役割を持つのかを教えてもらった。

次回は、大高さんの誇るもう一つの分野、「イルミネーション」における明かりの役割について掲載予定。店舗設計の話以上に、面白い話が聞けそうだ。

こちらもお楽しみに。

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4 件の返信 (新着順)
やまさん バッジ画像
2024/02/16 20:13

美容院など明かりによって店の雰囲気がグッと違ってきますよね。
シャンプーゾーンとカットの施術のゾーンとで照明を変えていたり。
あ~狙いを分けているな~と感じます。

さいちゃん バッジ画像
2024/02/06 19:38

明かりって本当に色々な感じ方があるんですね!
時々実家に帰った際に思うのですが、実母が電球色が落ち着くらしく、正直私はあまり明るいという感じはなく、普段よりなんか暗く感じる(むしろもっと明るくしたらいいのにと感じる)んですが、なぜか何か温かみを感じます。(ちなみに自宅はかなり明るい昼光色メインです。)
明かり(灯)って不思議ですね。

玉ちゃん
2024/02/05 11:20

よく行くや好きな店がどんな狙いがあっての明るさなのか、気になったのでチェックしてみます!

こかた バッジ画像
2024/02/03 06:34

明かり ロフトで商品を見ている時のワクワク感も、あかりによる演出効果が
大きいんですね。
落ち着いた空間の照明では、何となく 明かりのもつ温かみ を感じます。