人の心を“明るく”する「番組制作」の裏側に迫る! 敏腕プロデューサーの心得とは?|第1回
これまで、様々な明かりのプロに話を聞いてきたこの連載だが、「明るい」という言葉は、光の明暗のように、目に見える明るさだけを表現するものではない。「明るい性格」や「場を明るくする」などは日常的によく使われる表現だろう。今回は趣向を変えて、「世界を明るくする」プロの話を聞いてみたいと思う。話してくれたのは、様々なTVバラエティ番組、YouTubeなどで番組制作を手掛ける映像プロデューサーの高橋弘樹さん。世の中を明るくする番組制作に欠かせないものは何なのか、その道を生きるプロに聞いてみた。
高橋弘樹氏プロフィール
1981年生まれ、東京都出身。2005年にテレビ東京に入社。バラエティを中心とした様々な人気番組を手掛ける。代表作に、『家、ついて行ってイイですか?』『ジョージ・ポットマンの平成史』『吉木りさに怒られたい』など多数。2023年より、ABEMAに入社。ネット配信番組の制作を手がけている。自身のYouTubeチャンネル『ReHacQ-リハック-』も持つ。
毎日様々な娯楽や有益な情報を伝えてくれるテレビ番組や映像作品を作る、映像プロデューサー。憧れも大きいこの職業だが、実際にどのようなことを考えて面白い番組を制作しているのかは、知らないことが多い。今回は、そんな世界の最前線を走り続ける高橋弘樹さんに話を聞いてみた。全4回で、普段は知ることがない「番組制作」の裏側に迫る。
ーー高橋さんがテレビ業界を志したきっかけとはなんだったのでしょうか?
高橋:大学を卒業して就職活動をしている際は、ジャーナリストを志望していましたが、銀行や保険会社など別の業種も見ていました。元々文章を書くのが好きだったのですが、業界研究をするうちに、映像制作の現場は台本を書いたりする機会が多いということがわかったんですね。その中でも、当時はテレビ局が就職試験の時期が早かったんです。そこでまず受かった、ということが大きかったので、実はそこまで強い意志があったわけではないんです(笑)。
ーーそうなんですね! 元々はジャーナリスト志望だったということですが、バラエティの分野でお仕事をされていてギャップなどはありませんでしたか?
高橋:確かに、ジャーナリストは志望していましたが就職活動の段階でエンターテインメント職、というジャンルで応募していたんです。ジャーナリストになるとしても、エンターテインメントを経験している、ということは大きな強みになると考えていましたし、そこにギャップはありませんでしたね。変な言い方ですが、楽をしようとしていたんです(笑)。人と違うことをすることで、手っ取り早く別の競争力をつけようとしていました。ジャーナリストを志望する人は皆一年目から報道局に配属されますが、僕が当時思った報道局の欠点は、能動的に動く力がないということだったんです。どうしても事件が起きてから動くことになります。僕は自分からテーマを決めて書く、ドキュメンタリーを作れるようになりたかったので、そういった企画に携われるバラエティは望むところでもあったんですね。結局、それが面白くて18年もバラエティを作っていたんですが(笑)。
ーー高橋さんの思う、「面白い番組」「明るい番組」とはどのようなものでしょうか?
高橋:テレビって色々な見方があると思うんです。これは肯定的な意味なんですが、真剣に見続けるものだけではなく、朝準備をしながらの「ながら見」をするものもありますよね。こういった番組で必要になるのが、明るさだと思っています。朝から重い社会テーマを深刻に伝えられたいわけではないですから。逆に、ゴールデンや深夜番組では明るさだけを求められるわけではない。そういった番組では、人の興味を惹くような面白さが求められるのではないでしょうか。
ーーなるほど、番組ごとに違うものが求められるというのはよくわかります。テレビの明るさの演出に必要なものはなんでしょうか?
高橋:色々なアプローチがありますが、まずテレビは視覚メディアなので、照明やセットなど映像的な明るさを追求する、ということが挙げられます。聴覚ももちろん必要なので、選曲でも明るくすることはできますね。出演者の方も重要です、若く勢いのあるタレントさんが出ていると明るい雰囲気になりますし、もちろんお笑い芸人さんの起用などでもそういった空気感は演出できます。総合的に、明るい雰囲気を作り上げていくことが重要かな。
ーー明るさと面白さは、必ずしも一致するものではないですか?
高橋:そうですね、例えば『映像の世紀』などは、明るい番組という訳ではないですが知的好奇心を刺激されて面白いですよね。また、『めざましテレビ』などが目指すものはこれと異なり、深い知見を与えるようなテーマを深掘りする訳ではありませんが、様々なニュースやバラエティコンテンツとともに、朝の時間帯を明るく彩ってくれます。どちらの方がいいものである、と比べることもありません。対立軸にあるわけでもなく、別のものだと言えるのではないでしょうか。両立することもできるとは思いますが、必ずしもその必要もないですね。
ーー高橋さんご自身の手がけた番組では、明るさというものは重要視していましたか?
高橋:僕自身、そんなに明るい性格、という訳でもないんです(笑)。僕の番組も一緒じゃないかな。もちろん、視聴者に楽しんでほしいとは思っていますが、その演出の中で面白い、ということは重視していても明るさを一番とは置いていないかもしれない。この面白い、という感覚も難しいですよね。学術的に人が笑う、という行為は緊張をほぐす意味合いがあったりするかもしれませんが、番組では予想を裏切る面白さや、反対に予想通りに事が運ぶ面白さなどがありますよね。こういう視聴者とのコミュニケーションの中で、面白さや笑いというものは生まれてくるのではないでしょうか。
番組制作における、面白さの本質や明るさの演出に必要な物事は、まさにテレビ番組を作ってきた高橋さんだからこそ体験的に語れるものなのではないだろうか。次回は、様々なテーマの番組を制作するうえで心がけていることや、番組の印象を決める番組名など、別の角度から番組を作るということについて聞いていきたい。次回の更新もお楽しみに。
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