明かりが織りなす新芸術! 「光彫り™」が作る美しき青の世界を体験しよう|第1回
明るい、ということは、昔から人間にとって眩しく美しいものとして見られてきた。クリスマスのイルミネーションは華やかな気持ちで心を満たしてくれるし、焚き火の暖かな揺らぎは、忙しい毎日に疲れた人々を優しく癒やしてくれるもの。そのような「明かり」を用いた芸術に、今新しい風を吹き込んでいる日本人がいる。それが世界初のオリジナル技法「光彫り™」を考案した芸術作家のゆるかわふうさんだ。彼が生み出した光彫り™とは何なのか、その新しい可能性の世界に飛び込んでみよう。
ゆるかわふう氏プロフィール
1980年生まれ、大阪府出身。東京藝術大学美術学部建築科卒業、同大学院美術研究科芸術学(美術解剖学)修了。在学中に生み出した光彫り™は唯一無二の芸術として評価され、日本テレビ系「ヒルナンデス!」など各メディアでも取り上げられ注目されている。舞台美術も手掛けるなどその活動は多岐に渡る。2024年3月には『光と時間 その先へ ゆるかわふう 京都展2024 in 和中庵』を開催。詳しくはhttps://www.yurukawafuu.comへ。
人々の心に目に見えない明かりを灯してくれるのが、芸術。その中でも、本当に明かりの持つ美しさを使った芸術「光彫り™」を生み出したのがゆるかわふうさんだ。新進気鋭の芸術家によるここでしか聞けない話を、全4回でお届けする。
ーーそもそも、光彫り™とはどんな技法なんですか?
ゆるかわ:光彫り™を構成するのは、二つの要素です。一つはその素材。建築用に用いられる「スタイロフォーム」という発泡断熱材を用いています。商品の規格はいくつかあるのですが、私は3cmの厚みのものを使用しています。この素材自体に、青い塗料が練り込まれているんです。なので、裏側から真っ白のLEDライトを透過して照らすと、この青く美しい光が浮かぶ、そういった理屈です。もう一つの重要な要素は、削るという作業です。削るとスタイロフォームの厚みが薄くなるため、より白い光が通るようになり、薄いところは明るく、分厚いところは暗く見えるようになります。彫る深さを変えてこの厚みの差をつけることで、光の陰影を生み出し、絵を浮かび上がらせるという、原理としてはとてもシンプルなものです。
ーー青い色は、てっきりライトの色味、もしくは絵の具を載せているのかと思っていましたが、素材そのものの色味だったんですね!
ゆるかわ:美しい青い色味も、このスタイロフォームを製造している企業のコーポレートカラーが素材に練り込まれているだけで、芸術作品に用いる目的で製造されているものではないんですよ(笑)。断熱材は家の壁の裏側や、床下に設置する建材なので普段私たちが目にすることはありません。なので、このメーカーの方にも実際に作品を見ていただいたんですが、こんなに美しい色味が出るのかと驚かれていました。別のメーカーだと別の色味、例えばオレンジや緑などもあるんですよ。私が主に用いるのが青というだけで、他の色を使った作品もあります。
ーーゆるかわさんが、光彫り™を生み出すまでの過程をお伺いさせてください。
ゆるかわ:私は東京藝術大学美術学部の建築科を卒業後、同大学の大学院へ進学、その後3年間教育研究助手を務めてから社会に出ました。その後は自身でデザイン関連の職業を興していたのですが、実はアーティストになるという気はあまりなかったんです。みなさんのイメージだと、東京藝術大学を卒業した人はアーティストになるものだと思われるかもしれませんが、そういった方は一握り。自身の適職についても悩んでおり、家具や印刷物のデザイン、建築の文化財保存調査など色々と行っていました。その後、知り合いが会社を立ち上げた際に私も参加したのがきっかけで、2015年ごろから光彫り™をはじめとした現在につながる芸術活動が徐々に増えてきた、という過程です。
ーー光彫り™は、ゆるかわさんのオリジナル技法なんですよね。
ゆるかわ:原理自体は古代ギリシャ時代からあるようなんです。薄い陶板を削り、その後ろから蝋燭の光で照らして絵を浮かび上がらせるというもので、原理としては同じですよね。私の新規性としては、これに建築用の断熱材であるスタイロフォームを用いた、という部分です。一番最初に制作したのは2008年に行われた大学の展示会。その頃は内々で実施した一回限りだったんです。私は湯河原に住んでいるんですが、そこでは「湯河原・真鶴 アート散歩」という、様々なアーティストがアトリエを開放し、それを散歩しながら鑑賞できるというアートイベントが毎年開催されているんです。それに参加しないかと誘われた時に、7年ぶりにあの光彫り™の技法で作品を作ってみようと思い、大きな鯨の作品を作ったんです。これがきっかけで、また光彫り™を行うようになりました。
ーーこの大作が2作目だったとは!
ゆるかわ:大きいですよね(笑)。画家さんなどは、小さな作品から大きな作品に繋げることが多いんですが、私は建築科を出ていることもあって大きな素材を使って作品を作ることに抵抗がなかったんです。この寸法も慣れ親しんだものでした。
ーーこれだけ大きいと彫るのも大変そうですが、どんな道具を使われているんですか?
ゆるかわ:主に大きく彫る部分は、インパクトドライバーを用いています。この先にホームセンターで売っているような、サビ取り用の金属のワイヤーブラシを装着してガリガリ削っていく感じです。もう一つは、ハンダゴテのような電気を通すと先端が熱を帯びる器具を使っています。これで、細かい線の部分やエッジのある部分を溶かしていきます。最後に、シンナーも使用しますね。これも面白くて、表面を溶かすことで色々な質感が生まれていくんです。柔らかい雲などの質感はこれで表現しますね。
ーーなぜ、スタイロフォームを使って作品を制作しようと思ったんですか?
ゆるかわ:別に、変わったことがしたかった!とかじゃないんですよ(笑)。僕は先にも言ったように建築学科出身で、ここでは断熱材を模型の制作などで使用するんです。ある時、友人とグループ展を行うことになり何を出そうか、と考えていました。普通に建築模型を出してもそれはアート作品なのか?などと悩みまして。そこで、試しにスタイロフォームに後ろから光を当ててみると、綺麗な青色が浮かび上がった。その時私はダイビングにハマっていまして、この青色を用いて真っ青な海をイメージした茶室を作ろうと思ったんです。天井も壁も青にして、珊瑚を彫ったりして海を表現しました。これを「海鼠庵(なまこあん)」と名付けて発表したんです。東京藝術大学には、絵が上手い人がたくさんいます。その人たちとはまた違うアプローチで制作したことが、光彫り™が生まれたきっかけですね。
海や空など、自然を思わせる美しい青色は、なんと偶然にも建築模型で使用する素材を使ったことから生まれていた。小さなきっかけから、新しい芸術が生まれてくるという話は聞くこともあるが、まさに光彫り™もゆるかわさんの経歴から生まれた芸術だとわかった。次回は、光彫り™が生まれた発想やモチーフとしている物について深掘りしていく。次回の更新もお楽しみに。
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投稿を表示すごく素敵で作品が強さと優しさがあってずーっとみていたいです
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投稿を表示光彫の世界、めっちゃ美しいですね😍
一度実物みてみたいです