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綺麗な写真を撮りたい方必見! プロが教える明かりの㊙︎テクニック!|第1回

前回の記事では、「日本一映像を楽しむビデオグラファー(映像作家)」のDAIGENさんに、楽しく綺麗な動画を撮るための明かりの扱い方を教えてもらったが、日常の身近な「写真」も綺麗に撮りたいと思う方は多いのではないだろうか。InstagramなどのSNSで写真を共有することも多く、「映え写真」を撮ることは多くの方にとって当たり前の行為となりつつある。例えばお気に入りの私物を撮ってSNS等にアップする、という時も、出来るだけ綺麗にそのアイテムを見せたいもの。その商品を究極に綺麗に撮る職業が、コマーシャルフォトグラファーだ。
今回お話を伺う中村雅也さんは、TOPPAN株式会社で活躍する生粋のコマーシャルフォトグラファー。

全4回で被写体をより美しく見せる術を教わっていこう。


中村 雅也氏プロフィール

1977年生まれ、群馬県出身。2007年にTOPPAN株式会社入社。物撮り撮影を中心にコマーシャルフォトグラファーとして活動中。スチール撮影から、映像撮影、ディレクション業務を手掛ける。コマーシャルフォト専門誌に掲載する記事の制作も行う。


カメラマン、フォトグラファーという職業のことは知っていても、実際にどのようにしてその撮影が行われているのかは意外と知らないものだ。今回は中村さんに、フォトグラファーになったきっかけと普段どのように撮影をしているのか、そしてその中で明かりはどう扱われているのかを聞いてみた。

ーー中村さんがフォトグラファーになられたきっかけはなんだったのでしょうか?

中村:大学時代は中央大学文学部で国文学を専攻していました。文章ももちろん好きだったのですが、その頃ビジュアルで想いを伝えるということに魅力を感じ、写真に興味を持ちました。卒業後、貸しスタジオで働き、フォトグラファーのアシスタント、フリーのフォトグラファー、カメラマンアシスタント派遣会社を経て、現在のTOPPAN株式会社に就職した、という経緯になっています。

ーー今はどういったものを撮影する機会が多いのでしょうか?

中村:ものは何でも撮影しますが、コーマシャルフォト(商品を広告・宣伝するために撮る写真)が中心ですね。もちろんモデル撮影も物撮り(人物ではなく、商品そのものを撮ること)もやります。最近は、静止画だけでなく動画の撮影も増えてきました。

玄光社コマーシャル・フォト 2017年8月号 「SONY α9で撮る」

ーー撮影時の明かりに関して、例えば物撮りの際はどのように明かりを設定していますか?

中村:まずはメインライトを決めて、そこに足し算、引き算をして商品がより良く見えるようにライティングを組み立てていっています。ですが、撮る側と見る側のモニターの違いでその色味は変わってしまうこともあります。なのでTOPPANでは、スタジオで撮影する商品の正確な色味を表現するために、カラーマネジメントシステム(CMS)を用いて、カメラマンのモニターと印刷をする製版部隊の間で統一した認識をとれるようにしていますね。製品を忠実に見せることが、コーマシャルフォトではまず大切なことです。そのために、正しいライティングが最重要なんです。そこありきで、イメージカットなども撮っていく、という形ですね。

ーーまさに、その道のプロならではのお話ですね! 一般の人でも真似できるようなライティングの手法はありますか?

中村:光の順光を意識すれば、綺麗な写真を撮ることができると思います。順光とは、被写体に対してカメラ側から光が当たっている状態を指します。太陽の光を考えてもらえば分かると思うのですが、朝日や夕日は斜めから光が当たりますよね。そして、昼間の光は真上から光が当たる形になります。それぞれ見え方は違いますが、どちらも綺麗に光が当たって被写体が良く見えるという印象はないでしょうか。光の当たり方で被写体の見え方は変わるので、見せたい写真が撮れるように明かりの位置を変えることが、第一です。後ろから光が当たっていると逆光になってしまうし、横側からの光では正面が暗く落ちてしまう。この適切な位置、というものが大事になると思います。

ーー適切な位置、というのは……?

中村:そこは、撮影しながら探っていかなければいけない部分が多いのですが、まずは基本中の基本として、被写体に対して斜め45度の角度から光を当てる、ということが大前提です。そこから光を当てる角度などを少しずつ調整していき、最も適切な位置を探していく、という感じですね。

玄光社様 ビデオサロン 2023年8月号「物撮りムービーを極める」

ーー撮る物の形によっても変わりそうですね。

中村:物によって光を当てる角度が変わる、というより、被写体、商品全体がきちんと見えるようにすることが大事です。角度がついている形状のものを撮るとき、左側から光を当てると右側に十分に光が当たらない、ということがよくあります。その時は、右側に光を反射するレフ板を置くことで、左側からくる明かりを反対の右側にも十分に照らしてあげることが出来ます。これが先に言った、明かりの足し算です。それとは別に、被写体が白いものだとライトを反射して、白飛びしたり輪郭がぼやけてしまうこともあります。こういった時は、被写体の横に黒い板を置いて光が反射しないようにカットしてあげる必要があります。黒で締める、という言い方をよくしますが、これが明かりの引き算です。

玄光社様 ビデオサロン 2023年8月号「物撮りムービーを極める」/協力:パティシエ・喜納彩乃

ーーなるほど! それは真似できそうです。実際にコーマシャルフォトを撮る時にはどれくらいライトを使っているんですか?

中村:スタジオで撮影する時は、ペットボトルくらいのサイズの物でも10灯くらい使う時もありますね(笑)。今は写真の編集技術も進んでいるんですが、綺麗に見せるためにはまずライティングありき、だと思っています。ペットボトルを撮影するとしたら、まず基本の斜め45度の位置にメインライトを置き、水の透明感を出すために後ろ側からバックライト、というものを光らせます。これは逆光になるのではないか、と思うかもしれませんが、メインライトが順光の位置に存在するため全体では逆光にならず、奥行きをきちんと表現できるんです。

ーー流石に10灯を用意することは難しいですが、液体を綺麗に撮るためにバックライトを使う、というのは面白そうです!

中村:そうですね、これ以外にも物の形状や性質、材質によって細かく明かりの当て方を調整しています。今後街中や雑誌などで広告写真を見るときは、メインライトはどこから当てているのかな?など想像してみても面白いかもしれませんね。


中村さんから写真撮影における明かりの基礎の考え方について教わることができた。広告写真ならではの技術もあるが、普段の撮影でも真似できることが多そうだ。次回は、より詳細な撮影手法や広告撮影の裏側について聞いていく。次回の更新をお楽しみに。

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1 件の返信 (新着順)
fuku art
2024/03/29 10:05

素敵な知りたかったコラムありがとうございます。
後でゆっくり拝読いたします。