明かりで生命を吹き込む、絵師が描く“瞳”の世界|第1回
「目は口ほどにものを言う」。そんなことわざがあるように、瞳を見れば言葉を発さずとも、秘めたる感情や人となりが伝わってしまう。イラストの世界でもキャラクターの眼差しは極めて重要。ポップカルチャー界で活躍するイラストレーター=“絵師”5名が描くオリジナルキャラクターの瞳の輝きが生む発電能力を換算する特別企画「キラメキ電力調査」と連動して、企画にご協力いただいた人気絵師・さいとうなおきさんにインタビューを行いました。瞳の電力は換算できても、絵師が瞳に注ぐ熱量は計り知れない……!?
さいとう なおき氏プロフィール
イラストレーター・ユーチューバー
1982年生まれ。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。
『ポケモンカードイラストレーター』
日清どんべえのCMイラスト、ゲーム『ドラガリアロスト 』のメインイラストレーターなど、YouTubeチャンネルにて『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。
「ポケモンカード」の作画などで知られるさいとうなおきさん。YouTuberとしても活動するなどその活躍はめざましい。全3回の連載では、オリジナルキャラクター・雷光ピリカのここだけの製作秘話のほか、「明かり」で驚くほど変化する瞳の描き方の実演も!
――漫画やアニメなど、ポップカルチャーの第一線にいるイラストレーターを敬い「絵師」と表現されることがあります。さいとうさんにとって、絵師とはどんな人々でしょうか?
さいとう:ずっと時をさかのぼると、おそらく最初は江戸時代中期に着物の下地を描く図案家 と呼ばれる人たちがいたと思います。次第に書籍の挿絵、風刺画、漫画…という感じで、絵師のあり方は時代によって変化してきたんじゃないかなと思うんですよね。日本でソーシャルゲームのイラスト需要が下火になった今はVTuberの絵師が増えているような体感です。だから、絵師を一括りにするのはなかなか難しいですよね。僕自身も5年スパンくらいでやることが変わってきています。
――そうなんですね。YouTubeもその一つでしょうか?
さいとう:はい。最初はカードゲームのイラストをずっと描いていましたが、それがソーシャルゲームの仕事になり。30半ばにしてYouTuberに転身したときは、妻にびっくりされました(笑)
――(笑)。ところで、さいとうさんがイラストを描き始めたのはいつごろなのでしょうか。
さいとう:小学校3〜4年生のころに大流行していた大好きなゲームのキャラクターを、めっちゃかっこいいなと思っていました。絵が上手いとクラスの人気者になれるようなこともあって、遊びで描いたりはしていましたね。ただ、インターネットもなく今に比べて情報が少ない時代だったので、幼少期はゲームや漫画のキャラクターは機械が勝手に生成してくれるんだろうと思っていたんですよ。「まさか人が描けるわけないよね」と。
――そんな少年が、いつしかイラストを生業にするようになったのですね!
さいとう:高校生の頃にはパソコンを手に入れて、友達と作ったHPに絵を載せたりしていました。大きな契機となったのは芸大の学生時代。ウェブにイラストを載せていたところ、作品を見た方からカードゲーム「デュエル・マスターズ」の依頼が舞い込んできました。運が良かったなと思いますね。
――その後も数多くのイラストやキャラクターデザインを手がけられてきましたが、関西電力から「キラメキ電力調査」の依頼を受けたときの率直な感想をお聞かせください。
さいとう:なんかすごく面白い企画だなと。瞳のキラめきから電力を測るって、なかなかない発想ですよね(笑)
いつもなら「かわいいキャラを」とオーダーされると、それが美少女的なかわいさなのか?もしくはホワッとしたかわいさなのか?みたいな部分を最初にすり合わせるんですが、今回は「瞳の輝きが生み出す発電能力を換算する」という企画であったため、瞳のデザインにこだわるということ以外はほぼお任せしていただいて 。僕がどんなキャラを描いたとしても面白がってくれるのかなと思ったのであえて詳細を詰めずに、ちょっとふざけたキャラを提案してみようと思って描きました。
▲「キラメキ電力調査」でさいとうなおきさんが描く「雷光ピリカ」 光り輝く瞳が印象的
――さいとうさんとしても、個人的に楽しみながら描いていただいたんですね!
さいとう:はい。珍しいタイプのお仕事でしたね。関西電力さんは電力だけでなく、まちづくりなどいろんなことに取り組んでいるからか、おもしろいことを考える会社だなと思いました。
⇒さいとうさんにもご協力いただいた「キラメキ電力調査」はこちら!
https://www.kepco.co.jp/kirameki-denryokutyosa/index.html
――ありがとうございます!また、今回の企画ではキャラクターの瞳に着目しました。絵師さんにとって瞳とはどういう存在なのでしょうか?
さいとう:これはなかなか難しいんですが、瞳にも時代性が出ると思うんですよ。
――時代性ですか。
さいとう:僕の考えでは、バブル期には強気な瞳が多くなる一方、不景気であれば元気すぎる瞳を見ると「ちょっとあんまり突っ込んでこないでほしい」と感じる人も多いと思います。受け手のモードによって目のサイズを変えたりキラキラを抑えてみたり、調整が必要になってくるんです。
――ちなみにここ数年はどうですか?
さいとう:今ってそんなに景気が良くないと思うので、個人的にはあまり目力はアップしすぎない方がいいんじゃないかなと。ただ、ソーシャルゲームが全盛だった少し前までは小さくて控えめな目が主流だったのに、VTuberが流行っている最近は派手な色使いに見える目も受け入れられているような気がするんです。僕としても「今の時代にどうしてだろう?」と不思議に思っています。
――それを聞くと、これからイラストの瞳を見る目が変わりそうですね。ところで絵師のみなさんは、やはり瞳の描き方にこだわりがある方が多いのでしょうか?
さいとう:そう思います。絵師自身のオリジナリティを瞳で表現する方が多いと思いますね。わかりやすい例でいうと、ハイライトという白い明かりがありますが、あれを瞳のどこに入れるかによってキャラクター性も作家性も大きく変わってくるんですよ。
――とっても興味深いです。そのお話、ぜひ詳しく教えてください!
次回は、オリジナルキャラクター・雷光ピリカの貴重なラフ画も登場!キャラクターデザインのこだわりを伺いながら、どのようにしてイラストに生命を吹き込んでいったのか、さいとうさんの頭の中をちょっぴり覗いてみることに。次回の更新もお楽しみに。
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